平家物語を読んでみた
平家物語の文体はとてもテンポが良く、声に出して読んでみるとそのリズム感に酔います。
この時代の軍記物によくある「決まり文句」も繰り返し使われているのですが、この「決まり文句」もリズム感を出すのに貢献しています。
「目もくれ心も消え果てて…」
「押しならべ、ひつ組んでどうと落ち、取って押さえて頸をかき」
このような「決まり文句」も軍記物の軽快な文章に、さらにスピード感を与えています。
さらに「平家物語」の文章は「聞いても」心地良いのです。
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」
平家物語の「開幕」の一節です。
テンポよく一気に物語の中に引き込まれて行く出だしですね。
薄幸の美女「小督の局」を仲国が訪ねる件では
「松の一村ある方に、幽かに琴ぞ聞こえける。峯の嵐か松風か、尋ねる人の琴の音か」
寂しさや悲しみと共に、静寂な風景も感じられる文章です。
平家一門の「都落ち」の段では、
「保元の昔は春の花と栄えしかども、寿永の今は秋の紅葉と落ち果てぬ」
「昨日は東関の麓にくつばみをならべて十万余騎、今日は西海の波に纜を解いて七千余人」
このような「名調子」が平家物語にはいたるところにあるのが魅力なのです。
平家一門の栄枯盛衰が、簡潔な文体でリズムよく淡々と語られるのは読んでも、その文章を聞いても「心地良い」のです。
「平家物語」では平清盛は「悪人」として登場しますが、一代で公家政治の世を、武家政治へと大転換させた「武士」としての清盛。
「武士」といえば平家物語では斉藤実盛が語る「東国武士」を述べる件もテンポが良い名文ですね。
「馬にのつればおつる道をしらず、惡所をはすれども馬をたをさず。 いくさは又、親もうたれよ、子もうたれよ、死ぬればのりこえのりこえたゝかふ候」
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