深夜の友は真の友

人生は短く、夜もまた短い。今日できることは明日に延ばして、せめてこの深夜の一時を…

梁塵秘抄を読みました

      2021/03/20


 
 

古典文学って、なんか取っ付きにくい感じがするかもしれません。
しかし、古典文学を読むことで我々日本人のご先祖様達も、現代の我々と同じ喜怒哀楽を持って生活をしていたんだと感じるのも楽しいものです。

古典文学の中でも異彩を放つのが「梁塵秘抄」です。
私が好きな古典文学の一つです。

これは、平安時代後期の一般庶民が歌っていた謡曲を集めたものなのですが、編纂したのは後白河法皇です。
法皇という高い地位にある人が、当時の庶民が詠っていた謡曲を編纂したといいのも興味深いですよね。

時代は「天皇、公家」を中心とした貴族社会から武士社会に激変する時代で、平清盛が平家全盛の時代を作り、そうしてこの「おごる平家」を源頼朝が打倒した時代でした。

このあたりは「平家物語」で詳しく描かれていますが、この梁塵秘抄はまさにこの時代の一般庶民に歌い継がれてきたものなのです。
こうした時代の激変期の、その時代に生きた一般庶民の生の息遣いを感じ取れるのが「梁塵秘抄」の魅力です。
 
 

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「我が子は二十歳になりぬらん、
博打してこそ歩くなれ、国々の博党に、
さすがに子なれば憎かなし、
負いかいたまうな、王子の住吉西の宮」

 

【意訳】
私の子供は、もう二十歳になったでしょうか
今は全国あちこちを流れ歩いて博徒の仲間になっているようです
そんな子でも自分の子ですから憎いわけじゃありません
王子の神様、住吉西の宮の神様、どうか我が子を負けさせないでください。
 
 
今も昔も、母親はたとえ不肖の息子でも我が子を思う気持ちは同じですね。博打打ちとなり全国を流れ歩いている不肖の息子を心配し、それでも博打で勝たせてくださいと祈る母親の気持ち…

私が住む関西には、この「王子の神様…王子神社」「西の宮神社」「住吉神社」が現存しているのですが、1000年ほど前にこれらの社で、この母親は自分の不肖の息子の無事を祈ったのかと思うと、1000年近い時代を経て現代の私にも考え深いものがあります。
 
 
 
 
「わが子は十余に成りぬらん 巫してこそ歩くなれ             
田子の浦に汐ふむと 如何に海人集ふらん
正しとて 問ひみ問はずみ嬲るらん いとをしや」

【意訳】
私の娘はもう10代の年になったでしょうか。
歩き巫女になって全国を歩いているようです。
田子の浦あたりの海岸を歩けば、漁師達が集まることでしょう。
占いが当たったとやら当たらないとやら、漁師たちがからかうでしょう。
ああ、こんな境遇の娘がかわいそうに。
 
これも、我が娘を思う母親の歌です。
現代なら、家出した娘を心配する母親の気持ちと同じでしょうか。
 
 

古典文学の楽しみは、時代を超えて「共感」できることなのです。

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