先進技術実証機 ATD-X 心神の開発とF3について
2017/01/18
先進技術実証機 (Advanced Technological Demonstrator-X, ATD-X) 日本の防衛装備庁が三菱重工業を主契約企業として開発を行っている先進技術実証用の航空機。プロジェクト初期にはこの先進技術実証機は「心神(しんしん)…富士山を意味する」と呼ばれていたが現在では使われていない。
■先進技術実証機とは
この先進技術実証機は将来の国産ステルス戦闘機F3( stealth fighter F3)に適用できるステルス技術のノウハウを蓄積することを目的としている研究機である。一般的な戦闘機と比べて機体は大幅に小型で、エンジン1基あたりの推力も小さく機体に武器の搭載能力はない。したがって、このATD-X自体が制式採用され、量産、実戦配備されるといった予定や計画はない。
この実証機の開発により、防空用レーダーなどにステルス機が実際どのように映るかを解明し、ステルス機の探知能力とステルス性と運動性を持つ将来国産戦闘機の実現を目指している。防衛省は、F2の退役時期までに、独自開発を選択肢として考慮できるよう、国内において戦闘機関連技術の蓄積、高度化を図るとしている。
F2の後継機となるF3は強力なエンジンの搭載で大型化し機体デザインも先進技術実証機(ATD)とは 全く別物となる。
■先進技術実証機の開発スケジュールと、国産ステルス戦闘機の開発
先進技術実証機の開発においては実物大模型のRCS試験や、5分の1縮小サイズ無人モデルの飛行テストは成功している。
2009年(平成21年)度から実機の開発が開始され、
2012年3月28日に愛知県飛島村の三菱重工業、飛島工場にて試作機の組み立てが開始されている。
2016年(平成28年)1月以降に初飛行を予定されている。
この研究開発の結果をふまえて、2018年(平成30年)頃に国産戦闘機の開発が開始される予定である。
■先進技術実証機 開発の詳細
先進技術実証機は双発機で、低RCS(Radar Cross Section、レーダー反射断面積)を実現する為に、機体側面にチャイン(ストレーキ)を持ち、2つの垂直尾翼を外傾させ、機体構造部の多くに新複合材料が採用されている。
この機体サイズは約14mほどで約8トンの離陸重量を実現する実証エンジンの搭載が予定されており、F-22の全長18.92mに対して大幅に小型である。
■先進技術実証機の主要諸元
全長:14.174m
全幅:9.099m
全高:4.514m
離陸重量:8t(想定)
エンジン:IHI XF5-1(アフターバーナー推力約5t)×2(想定)
最大速度:不明
■実証エンジンXF5-1
XF5-1は、先進技術実証機への搭載を想定しているアフターバーナーを備えたターボファンエンジンである。
XF5-1に設置される推力偏向機構とレーダーブロッカー等は、通常の戦闘機では制御不可能な失速領域においても機動制御を維持し、かつ高運動性を確保するものでXF5-1の噴射口に3枚の推力偏向パドルを取り付けている。
■国産ステルス戦闘機F3の開発
航空自衛隊の戦闘機「F2」の後継機となる戦闘機「F3」に搭載する「ハイパワースリムエンジン(HSE)」は「先進技術実証機(ATD)」に搭載された推力5トン級の「実証エンジン(XF5)」の技術を生かしながら、IHIと防衛省技術研究本部が開発する。2015(27)年度予算の事業として心臓部の圧縮機や燃焼機、高圧タービンの試作に着手し、2018(平成30)年度をめどに試作エンジンを仕上げる予定である。スケジュール通りに開発を終えれば2028(平成40)年以降に順次、部隊に配備される。
このF3は対空戦闘で他国の最新鋭戦闘機を凌駕する性能を目指していて、HSEは第5世代戦闘機に搭載される。HSEを2つ搭載した双発戦闘機は、アフターバーナーを使わずに、常時音速以上で飛行する「スーパークルーズ(超音速巡航飛行)」が可能となる。
ステルス戦闘機の場合、正面から見た断面積をどこまで小さくできるかがステルス性能の差となって現れるのだが、HSEの推力は実証エンジンの3倍ながら、直径は実証エンジンの70センチに対して約1メートルに抑え。世界的にもこの馬力のエンジンの直径としては極めて小さい。
さらに推進方向を機動的に変えられる機能も持ち、完成すれば世界有数のステルスジェットエンジンとなる。
すでに実証エンジン(XF5)では加速性能の目安の一つである「推力重量比(地上最大推力÷エンジン重量)」で米国製を上回っている。
三菱重工、ステルス試作機「X-2」の初飛行の動画
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